「金融教育って何?」
「日本のお金に関する教育の現状や課題が知りたい」
この記事はそんな方に向けて書いています。
こんにちはHarinezumiです。
皆さんは高校教育までの期間でお金に関する授業を受けた記憶があるでしょうか?
僕は全くと言っていいほどありません。
家庭科の授業で人生設計のようなものを立てた際に少しお金に関するお話を先生がしていたような気がする・・・といった程度です。
人生において切っても切り離せないお金ですが、2020年度までの日本ではお金の教育が広く普及されておらず、1900年代においてお金に関する教育はタブー視されていたいう内容を本で目にしたことがあります。
今回はそのようなお金に関する日本の教育について詳しくお話したいと思います。
金融教育ってなに?
「金融教育…」
2000年に入ってよく耳にするようになった方も多くいるかもしれません。
これは日本においてお金に関する教育の重要性が高まったために2005年からこの話題に関する議論が増えたことによるものだと考えられます。
では金融教育についてお話をする前提段階として「金融リテラシー」について正しく理解する必要があります。
金融リテラシーとは
金融庁が発表している金融リテラシーの定義は以下になります。
金融リテラシーの定義
『金融に関する健全な意思決定を行い、究極的には金融面での個人の良い暮らし(well‐being)を達成するために必要な、金融に関する意識、知識、技術、態度及び行動の総体』
なんか難しいですよね。
ただ、ひとつひとつ丁寧に理解していけば難しくはありません。
つまり、
「お金の扱い方に関する安全で正しい判断を自分自身で行います。それを行うことによるお金に関係した私たちの生活がより良いものであるために必要な考え方や、知識、お金に対する取り組み方のことをまとめて金融リテラシーというのですよ」
ということを言ってくれています。
「金融リテラシー」は日本だけにとどまらず、国際的にも注目されている事柄になります。
リテラシーとは簡単に言うと「能力」のことを指します。
ですから、さらに簡単に表すと金融リテラシーは、
お金に関係した知識や考え、取り組みに関する能力のことです。
金融教育 (金融経済教育) とは
さて、いよいよ金融教育についてです。
世間で金融教育といわれる事柄は多くの場合に「金融経済教育」のことを指します。
この「金融経済教育」という言葉は文部科学省や金融庁など政府の資料に出てくる言葉であり、これが多くの場合に世間で「金融教育」といった言葉に略されて使用されています。
ですから、このサイトでは「金融教育」=「金融経済教育」と考えていただいて問題ありません。
前置きが少し長くなってしまいましたが、それでは金融教育についてお話をします。
金融教育とはズバリ、「お金に関する教育」のことです!
「え、それだけ?」と思った方もいるかもしれませんが、簡単に言うと本当にこれだけです。
しかし国を挙げた教育ですから、教育の目的がきちんと示されています。
その目的が「金融リテラシーを身に着けること」なのです。
この金融リテラシーを分野ごとに国は分割しています。
「家庭管理」「生活設計」「金融商品の選択」「金融経済の理解」といった生きていくうえで、知っておいたほうが良い、いや知らなければならない知識的な分野になります。
また、以上の事柄は自分が学び、自分の能力として人生に生かすものですが、お金に関しては法律などがからみ、複雑になってしまうことがよくあります。
そのような場合には「外部の知見を利用する」といった選択をする機会があるかもしれません。
しかし、残念なことに詐欺にあってしまう機会も少なくはないのが現状です。
ですから「外部の知見の適切な活用」も金融経済教育の中の大切な分野の1つとして位置付けられています。
以上を金融教育に必要な項目をまとめると、
- 家庭管理
- 生活設計
- 金融商品の選択
- 金融経済の理解
- 外部の知見の適切な活用
になります。
これらの金融教育の項目もこれから先、いつか記事にします。
ぜひ、一緒に勉強を進めていきましょう。
日本の金融教育の歴史
今の大人は十分な金融教育を受けいていない可能性がある?!
それでは日本の金融教育はどのように成長をしてきたのでしょうか?
そもそも、
「こんなの教えられた覚えないよ…」
そのような方もいるかもしれません。
それもそのはず。
日本で金融教育について真剣に考え始めた時期は2005年だと私は考えています。
しかし、2002年の教育に関しても世間の意識はまだまだ低く、正式に教育方針として取り入れられたのは2022年だと言っても過言ではありません。
では日本の金融教育は今までどのように行われてきたのでしょうか?
日本の金融教育の歴史
以下は日本の金融教育の歴史を時系列に分かりやすく表したものになります。
1947年(昭和22年)
第二次世界大戦後、日本は新しい教育制度を導入し、1947年に学校教育法が施行されました。
このとき、「家庭科」という教科が設置され、家庭生活に必要な知識を学ぶ授業が始まりました。
家庭科では、主に家事や生活スキルについて教えられていましたが、金融やお金の使い方に関する教育はまだ限られていました。
2002年(平成14年)
2002年、金融リテラシーの重要性が高まり、金融庁と文部科学省が協力して学校での金融教育を強化し始めました。
しかし、この時点では、基本的な家計管理や消費の重要性などに焦点が当てられており、投資や資産運用のような高度な金融知識についてはあまり教えられていませんでした。
2013年(平成25年)
2013年には、「消費者教育推進法」が施行されました。
この法律の目的は、国民が消費者として正しい選択や判断をできるようにするための教育を強化することです。
これにより、学校の授業でも、商品の選び方や契約、消費者としての権利や責任について学ぶ機会が増えました。
とはいえ、この段階でも投資やローンのような金融知識はあまり詳しく教えられていませんでした。
2022年(令和4年)
2022年に、学校教育での金融教育が大幅に拡充されました。
特に、高校の家庭科のカリキュラムでは、投資、ローン、クレジットカード、年金制度など、より実践的で将来に役立つ内容が加わりました。
これは、社会で必要な「金融リテラシー」を育てるための重要な改革でした。
具体的には、次のような内容が教えられるようになりました。
- 投資と資産運用:株式や投資信託、NISA(少額投資非課税制度)などの基本的な仕組み。
- ローンとクレジットカード:借金やローンの利息、クレジットカードの使い方とそのリスク。
- キャッシュレス決済:スマートフォンやカードによる支払い方法、電子マネーの使い方。
- 税金と年金:税金の仕組みや、将来の年金についての基礎知識。
この新しいカリキュラムの目的は、若い世代が将来にわたってお金に対して正しい判断ができる力を身につけることです。
社会に出たとき、投資や貯蓄を含め、どのように資産を管理し、リスクを避けるかといった現実的なスキルが重要とされています。
まとめ
2022年から、日本の学校教育での金融教育が本格化しました。
家計管理に加えて、投資、ローン、クレジットカード、キャッシュレス決済など、日常生活で必要な金融知識を幅広く学べるようになりました。
これにより、若い世代が社会に出る前に、より自立したお金の管理能力を身につけることが期待されています。
参考文献
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(家庭科)」
- 金融庁「金融経済教育推進のための提言」
- 消費者庁「消費者教育推進法」
今の金融教育はどうなっているの?
日本の金融教育の歴史からも分かるように、2022年以降日本の金融教育は大きな成長を遂げました。
それでは、今の日本の金融教育はどのように行われているのでしょうか?
先ほど国は金融教育、すなわち金融リテラシーの教育を分野ごとに分けていると書きましたがどのように分けられているのでしょうか?
国は金融リテラシーを以下の4分野に分けいています。
- 1、家計管理
- 2、生活設計
- 3、金融知識及び金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択
- 4、外部の知見の適切な活動
さらにその4分野を以下の項目ごとに分け、教育の目的を明確にしています。
また、国は
日本の金融教育の課題とは?
日本の金融教育の現状がある程度わかったところで、課題はどのようなことが挙げられるのでしょうか?
日本では、2022年から学校教育で本格的に金融教育が導入され、家庭科の授業を通して投資や資産運用、クレジットカードやローンについて学ぶ機会が増えました。
この取り組みは、将来に向けて若い世代が金融リテラシーを身につけ、社会に出たときに適切な判断をできるようにするという重要な目的を持っています。
しかし、金融教育にはいくつかの課題が残っています。
ここでは、その主な課題について詳しく説明します。
1. 教師の金融知識の不足
まず大きな課題として挙げられるのは、金融教育を担当する教師自体の知識が不足しているという問題です。
金融教育はまだ歴史が浅いため、教師が金融や経済に関する十分な知識や経験を持っていないケースが少なくありません。
家庭科の教師が投資や資産運用といった高度な金融知識を教えるには、専門的な訓練が必要です。
しかし、現状ではすべての教師がそのような研修を受けられているわけではありません。これにより、教え方や内容の質にばらつきが生じる可能性があります。
2. 授業時間の限界
金融教育が強化されたとはいえ、学校で金融について学ぶ時間は限られています。
家庭科の授業は、家計管理や消費者教育の他にも、栄養や調理、衣服、住居に関する内容もカバーしなければならず、金融に関する授業だけに十分な時間を割くことが難しいのです。
このため、金融教育が十分に行われず、内容が表面的になってしまうという課題があります。
限られた授業時間内で、どれだけ深く、実践的な金融知識を伝えられるかが今後の重要な課題です。
3. 学習内容の複雑さ
金融教育で扱われる内容には、ローンやクレジットカード、投資、税金など、かなり専門的で複雑なテーマがあります。
これらの概念は、日常的に触れることが少ないため、生徒にとって理解しにくい部分が多いです。
特に、投資や資産運用はリスクを伴うものであり、その理解には高度な知識が必要です。
高校生に対してこれらの複雑な内容をどのように噛み砕いて教えるか、また、どの程度まで踏み込んだ内容を教えるべきかは、大きな課題となっています。
4. 社会での金融リテラシーの浸透不足
学校で金融教育を受けたとしても、実生活でその知識をどのように活用するかが重要です。
しかし、日本全体で見ても、金融リテラシーが十分に浸透しているとは言い難い現状があります。大人になっても、投資や資産運用についての知識を持たず、貯金だけに頼っている人が多いです。
また、クレジットカードやローンの仕組みを十分に理解せずに利用して、結果的に負債を抱えてしまうケースも見られます。
金融教育を受けた子どもたちが、社会に出たときにその知識を活かせるような環境が整っていないと、学校で学んだことが実際には役立たない可能性があります。
5. 家庭での金融教育の不足
もう一つの課題は、家庭での金融教育の不足です。
子どもたちは学校だけでなく、家庭でもお金の使い方や管理について学ぶ機会が必要です。
しかし、親世代の金融知識が不十分な場合、家庭での教育が十分に行われないことが多いです。
特に、親自身が投資やクレジットカード、ローンに対する知識を持っていない場合、子どもに適切なアドバイスができないことが問題となります。
家庭での金融教育を補完するためには、親世代向けの金融リテラシー向上の取り組みも重要です。
6. 実践的な金融体験の欠如
金融教育で知識を学ぶことは重要ですが、実際にお金を使ったり、資産運用を行ったりする「実践的な体験」が欠けていることも課題です。
例えば、仮想の株式投資や家計管理のシミュレーションなどを通じて、実際にお金を管理する経験を積むことができれば、学んだ知識がより深く理解され、実際の生活で役立てられるようになります。
現状では、このような実践的な学びの場が十分に用意されていないことが、教育効果を限定的なものにしている可能性があります。
以上が日本の金融教育の課題になります。
日本の金融教育は、2022年から大きな進展を見せていますが、教師の専門知識の不足、授業時間の限界、学習内容の複雑さ、社会や家庭での金融リテラシーの浸透不足、そして実践的な金融体験の欠如など、さまざまな課題があります。
これらの課題を克服し、より効果的な金融教育を実現するためには、学校教育だけでなく、社会全体で金融知識を深める取り組みが求められています。
課題に対する改善策
日本の金融教育にはいくつかの課題がありましたが、それらを解決するためには、学校教育だけでなく、社会全体での取り組みが必要です。
以下に、各課題に対する改善策を詳しく説明します。
1. 教師の金融知識の向上
金融教育を担当する教師の知識が不足しているという問題に対しては、教師向けの専門的な研修やトレーニングが必要です。
文部科学省や金融庁は、金融教育の専門家を招いたワークショップやセミナーを定期的に開催し、教師が金融や投資の基礎知識を深める場を提供することが求められます。
また、オンライン学習やeラーニングを活用し、教師がいつでも最新の金融知識を学べるシステムを整えることも効果的です。
2. 授業時間の確保
授業時間が限られている問題に対しては、カリキュラムの見直しや、金融教育に特化した授業時間の増設が必要です。
例えば、家庭科の中に金融教育専用の単元を設けることで、金融リテラシーに関する内容を集中的に学ぶことができるようにするのも一つの解決策です。
また、総合的な学習の時間や特別活動の一環として、金融教育を取り入れることも有効です。
さらに、他の教科(数学や社会)と連携して、実際の生活に即した金融教育を横断的に行うことで、より深い理解を促すことができます。
3. 学習内容の簡素化と段階的な学び
投資やローンなど、複雑な内容を扱う場合には、生徒の年齢や理解力に応じて段階的に学ぶ工夫が必要です。
中学校では、基本的な家計管理や消費に関する知識を教え、高校でより高度な内容(投資や資産運用)を扱うというように、無理のない学習進度を設定することが重要です。
また、難しい概念は、事例やシミュレーションを使ってわかりやすく説明する教材を開発することも効果的です。
たとえば、ゲームやアプリを活用したシミュレーション学習により、金融商品の仕組みやリスクを体感的に学べる方法も有効でしょう。
4. 社会での金融リテラシーの向上
学校教育だけでなく、社会全体で金融リテラシーを向上させるためには、成人向けの金融教育も充実させる必要があります。
たとえば、金融庁や銀行、証券会社などの金融機関が主導して、無料のセミナーやオンライン講座を提供することが考えられます。
また、メディアやSNSを活用して、日常的に金融に関する知識を広める努力も重要です。
特に、若者や働き盛りの世代に向けたコンテンツを通じて、金融リテラシーを身近なものにする取り組みが効果を発揮するでしょう。
5. 家庭での金融教育の促進
家庭での金融教育を促進するためには、親世代にも金融知識を提供することが必要です。
たとえば、学校が親向けの金融教育セミナーを開催し、子どもと一緒に学べる機会を提供することで、家庭での教育がより効果的になります。
また、家庭で使える金融教育の教材やガイドブックを提供し、親が子どもに対して適切な指導ができるようにサポートすることも有効です。
さらに、親子で参加できる金融イベントやワークショップを通じて、家族全体でお金の管理について学ぶ機会を増やすことが望ましいです。
6. 実践的な金融体験の提供
金融教育の効果を高めるためには、実際にお金を管理する「実践的な体験」が重要です。
たとえば、仮想の株式投資ゲームや家計管理シミュレーションを導入することで、生徒が実際に投資や家計管理のプロセスを体験できるようにすることが考えられます。
また、金融機関と提携して、金融商品のシミュレーションやキャッシュレス決済の体験ができるプログラムを導入するのも効果的です。
さらに、高校生向けにアルバイトやインターンシップなどの機会を通じて、実際の経済活動に参加させることで、金融知識の実践力を養うことができます。
7. 金融教育の継続的な見直し
最後に、金融教育は社会の変化に合わせて常に見直す必要があります。
たとえば、デジタル通貨や暗号資産(仮想通貨)の普及に伴い、新たな金融サービスや技術に対応した教育が求められています。
したがって、カリキュラムを定期的にアップデートし、最新の金融知識やトレンドを取り入れることが重要です。
また、教育現場や生徒からのフィードバックを収集し、それに基づいて教育内容や方法を改善する仕組みを作ることも大切です。
金融教育の課題を解決するためには、教師の研修強化、授業時間の確保、学習内容の段階的な進行、社会全体での金融リテラシーの向上、家庭での教育の支援、そして実践的な体験の提供が必要です。
また、金融教育は常に見直され、最新の知識や技術に対応することが重要です。
これらの改善策を実施することで、より多くの若者が将来に向けて自立したお金の管理能力を身につけられるようになるでしょう。
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